金田一春彦記念図書館

人生雑感
<85歳の時の金田一春彦氏>
春風秋雨是人生。自然体の良い言葉ですね。

 

~こんな身近なところに膨大な蔵書が!有難い!~

私の年代が「金田一春彦」の名前を目にすると、国語辞書・方言研究・金田一京助のご子息、などを想起すると思う。ネットのない時代は、意味の分からない日本語を調べる時には辞書を引いて赤線を引き一つ一つ覚えていった。この赤線の量が勉強の証でもあった。その辞書には京助・春彦の両氏の名前が掲載されており、忘れられない記憶となっている。私の日本語の基礎になっているお二人だ。

特に、春彦氏は方言の研究者として遍く(あまねく)知られており、子供向けの本も沢山出していたので親近感が強かった。四字熟語や語源に関する本などは大変分かり易く、当時の小中学生は100%何かしらの接点があった学者さんだと思う。また、確か「吉展(よしのぶ)ちゃん誘拐殺人事件」の時、犯人の電話の録音を聴き、「これは福島かどこかのアクセントである」と推察し、実際犯人は福島出身であったことから金田一春彦の名前が一躍有名になったと記憶している。

<大泉 金田一春彦記念図書館>
・雨の日はここで時間をつぶす。地域の情報もたくさん

photo by S.Nozaki

そんな大学者の記念図書館が八ヶ岳南麓の高根町大泉にある。東京出身の方ですが、北杜市を大いに気に入り別荘をお持ちだったとか。膨大な蔵書は大学などに寄贈し、それでも未だ有り余るほどの本をお持ちだったのを当時別荘があった大泉村が新しい図書館を立てる際に寄付したとのことだ。何と有難いことでしょう。更に有難いことに、北杜市に住民票がなくても貸し出しOK。大いに利用させてもらっています。

<多数の貴重な資料展示>
・とても丁寧に保存されていたことがうかがわれる

photo by S.Nozaki

サラリーマン時代は、資料を作成する際には、①平易に②短く③見やすく、を念頭に説明文を書くように心がけていた。なかなか上手くいかないものだが、春彦氏の文章は大変いいお手本になる。難しい言葉を沢山ご存じのはずだが、使う言葉は大変分かり易く、ユーモアのセンスもあり、読んでいて心地よい。そう、心地よいんです。日本語はこうでなくちゃ。

なお、最近、心地よさの対極にあるイライラ言葉遣いの最たるものが「~させていただく」とへりくだった言い方。これは、相手に了解を得て行動に移すときなどに使用すると思うが、相手の都合に全く構わずやたらと「させていただく」を連発する日本語が広がっている。「させていただく」症候群のきっかけは、民主党が政権を取った時と言う人もいる。確かに、当時の総理大臣がやたらと使っていたのを思い出す。「国民の皆さんに説明させていただく」「斯様な陣容とさせていただく」「改めて調査させていただく」等々・・・丁寧と言う衣をまとった中身のない天ぷらみたいな政権だったな。

春彦氏は「良い日本語は残ってきますよ」と言われていたがどうなるのかな。彼の座右の銘が「春風秋雨是人生」とのこと。『春に風が吹き、秋には雨が降り、そうして自然の時が流れていく。そんな流れがこれまた人生だ』との意味だと思うが、こんな自然な流れの日本語を大切にしたいですな。(今流だと『大切にさせていただく』か(笑))

<高根町津金の棚田 春風秋雨>
・春彦氏もここを散策したかもしれませんね

photo by S.Nozaki

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