photo by S.Nozaki
真夏の昼下がり、私以外誰もいない
~中央線で通り過ぎるたびに何となく気になっていました~
大月駅から一つ東京よりに猿橋と言うローカルな駅がある。ホーム上の人影は少なく、周辺は観光地もなさそうな場所だが、ポツンと掲げられている「日本三奇橋の一つ、猿橋」と記した看板に以前から興味をそそられていた。会社員時代の恩人の命日に墓参を済ませ、中央線各駅停車を乗り継ぎながら八ヶ岳に向かう帰路、ぶらりと途中下車してみた。下車したのは私一人だけだった。
<一人だけ下車した猿橋駅>
・なかなかきれいに整備されている
残暑厳しく甲府で37度を記録したこの日、猿橋駅から15分程歩いて「猿橋」入口に到着した時は汗びっしょり。どこかの店に入ってキンキンに冷えたビールでも飲もうと思ったが、そんな店もない場所だった。観光バスが停まる場所があったが、車がない駐車場は寂れ感半端なく、観光客もいない。「日本三大○○」とか、「日本三名勝の一つ○○」とかは、往々にして大したことがなく、日本三大がっかりなどと揶揄されることも多い。ここもそうだろうと思いながら期待値を下げて橋へと向かった。
<猿橋 正面>
・なかなか立派な木造の橋だ
かなり険しい渓谷の上に架けられた橋であった。橋脚がなく、両岸から土台を少しづつ延ばして橋をつなげる何やら難しい構造となっている。現地の千数百年前の言い伝えによれば、サルが蔦を絡めながらそれをつたって渓谷を渡っていたのを真似て橋を作ったとのことだ。別の文献ではサルが一匹、二匹、三匹・・・と自ら土台を作りながら向こう岸に到達したとの言い伝えもあるようだ。あくまで言い伝えだが、いずれもサルが絡んでいるので「猿橋」と言うことか。
おサルさんのおかげで江戸時代には甲州街道の要衝となっていたそうだ。
<両脇からせせり出た支えが特徴>
・それにしてもこんな渓谷によく建設したな~
橋の構造として珍しいと感じたが、眼下を流れる桂川の険しい渓谷美もなかなか捨てがたいものであった。日本人はやたらと三○○などと呼称するのが大好きで、観光地も同様。三大夜景、三大花火大会、三大奇祭、等々。既にステイタスを確立した日本三景(松島、天橋立、宮島)や、記録として確実な日本三大河川(信濃川、利根川、石狩川)は重み・信頼感があるが、誰が名付けたか分からないものにはどうしても眉唾感が漂う。
<猿橋の下を流れる桂川>
・素晴らしい渓谷美を見せてくれる
この三奇橋の他の二つは岩国の錦帯橋、黒部の愛本橋とのこと。これらって奇橋かな~、違うよな~。それぞれの独自の美しさがあるよな~。「猿橋」さんも奇橋と言うよりは「渓谷美を堪能できるビューポイント」との印象が残った。何も無理して三奇橋なんて名付けなくても良いのに。でもまあ、三奇橋と言う名前が気になっていた一人の初老が訪ねたのだから呼称の効果は少しはあったのかな。
なお、独身寮にいたころ、結婚しないであろう「三仙人」の一人に選ばれた時があったが、ものの見事に皆の期待を裏切ってやった。(笑)
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