photo by S.Nozaki
未だ未だ建設産業機械の研修の必要性は高い
~伐木等特別教育を受講してきました!~
今年のサクランボ収穫を終えた盛夏の頃、新たな苗木を植えるために20本ほどの老木をチェーンソーで伐採した。自分はそんな機材を扱えない身分だったので、枝を切るくらいの手伝いしか出来なかったが、ベテランのパートさんが四苦八苦しつつ汗みどろになってやり終えた。当地では薪の準備が生活の一部となっているので多くの方がチェーンソーを扱っているので、こういう時はパートさんも貴重な戦力になる。自分もやり方を教えてもらったが、組織でこの仕事を行う場合は、労働安全衛生法により、事業者は従事者に特別教育を受けさせることが義務化されているので、それに基づき株式会社PCT(建機等の研修教育機関)にて三日間の講義を受講した。
<実技に使用したチェーンソー 三種>
・最近は電動の性能が大幅に向上している
夏にサクランボの伐木を手伝った時は、①樹木がとてつもなく重いこと、②林業でのチェーンソー事故が多いこと、③装備がしっかりと準備されていないと極めて危険なこと、を学んだ。40年位前は、チェーンソーの振動で手足の血流が悪くなって白く変色する「白ろう病」に多くの林業関係者が罹患していたことも思い出した。いわゆる「振動障害」と言うやつだ。今は安全衛生法のおかげで随分とそうした障害は改善されているようだが、現場での悲惨な事故は今も毎年起きている。そんな背景もあり、かなり気合を入れての受講となった。
チェーンソーの扱い方と整備方法、安全衛生法律関係、気を付けるべき振動障害、そして実技とたっぷりの講義であったが、どの内容もこれからの仕事と生活に極めて重要な内容だったので飽きることのない三日間だった。驚いたのは、講師よりも知識が豊富で実技も上手な受講生が何人かいたことだ。つまり、彼らは既に以前から現場でチェーンソーを扱った仕事をやって熟練しているものの、事業者側が義務である「特別教育」を受けさせていなかったということだろう。そんな中で彼らが現場作業をしっかり支えてきたと言うことだ。長野県から受講に来ていた人と知り合いになっていろいろ話を聞いたが、「以前チェーンソーが落っこちてきて足を切ったよ。血管が切れて全治一か月だったよ。仕事だから今も気を付けてやっているよ」と何か日常ごとの様に話していた。こうした危険な現場で働いている人はまだ沢山いるのだろう。
<PCTの内容満載のテキスト>
・業務従事者だけでなく事業経営者にも目を向けてほしい
<最近毎日見ているYouTube「社畜ジャパン」>
・現場のリアルな声にいろいろ考えさせられる
此処でも、典型的な「経営と現場のギャップ」の一面を見た思いだ。林業関係にとどまらず、例えば、トラックの運転手は法律上定期的に休憩しなければならないが、そんな都合よく時間通りに駐車できる場所があるはずもない。現場の運転手はなす術もなく、耐えて荷物を運ぶ。以前勤めていた会社では「残業するな、早く帰れ、明日までに資料仕上げろ」と唱える上司もいた。今年見切り発車したインボイス制度導入で大混乱するのは現場の人間。こんな矛盾を抱えつつも、日本人はまじめにコツコツと現場を収めてしまうから凄いと思う。「現場力」と言うやつかな。そうして現場の力が企業の力になっていくことは悪いことだけでもないと思うが、現場が爆発する臨界点と言うものもあるだろう。
現場丸投げ体質は何とかならんもんかの~。どっかの国の政治家さん達も言ってることが非現実的すぎる。間違った方向に行くとビッグモーターの二の舞になるよ。
一人、愛知県から来ている若者がいた。とてもハキハキとしており受講態度も大変真摯だったので印象に残っていたので話してみると「消防隊員」だった。建物倒壊等で下敷きになった人を救助する際に、実際は専門の業者さんに解体等を任せるそうだが、自分もチェーンソーの扱いを知っておきたいから参加したとのことだ。常に現場と向かい合っている消防署ならではだ。そして少しでも早く受講したいとの理由でわざわざ愛知から山梨まで受講に来る積極性に「日本の若者、まだまだ捨てたもんじゃない」ととても頼もしかった。こうして働く人たちの心意気みたいなものが現場を支えていると強く感じた特別教育であった。
<組織内での仕事には義務である特別教育修了証>
・受講者14人の中では私がおそらく最年長だったと思う
自分が働く果樹園も、伐木は大変重要でかつ危険な仕事だ。スキルを身に着けるだけでなく、防御服や機材の整備などの環境も整えなくてはならない。幸い経営者はその点理解があるので、理解と協力を得ながら現場力を蓄えて行きたいものだ。うちの若者正社員は頑張っている。パートとしても「現場力」強化を応援したいものだ。なお、今回の受講料は当然会社が負担してくれている。
何だかんだと「現場力」、良い言葉ですな~。「現地現物」「答えは現場にある」等、長年メーカーで働いていたからこそ身に着いた姿勢は、歳とっても無駄ではない。
高倉健が映画「海峡」(青函トンネルを開通させた現場の人間模様の物語)の中で、『自分は現場を離れるくらいなら仕事を辞めます』と言っていたシーンがあったが、超かっこよかったなぁ~。
<夏に切り出したサクランボの老木>
・1年乾燥させてチェーンソーで切り刻む予定だ
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