放置車を放置できる環境

生活と民俗や風習
<道端に何年も放置されているキャブバン>

photo by S.Nozaki

☆ちょっと残念な高根町の一面

高根町で散見される「馬頭観世音」の石塔が、どうやら行き倒れた馬たちの供養塔らしいことが分かり、散歩の足を伸ばしその石塔を見つけるとメモして分布図を作っている。見つけた中で一番古い石塔が明治21年、新しいものが昭和10年建立だ。石塔の横には馬の像を頭に載せた馬頭観世音菩薩が佇んでいることもあるが、最早その像はかなり雨風で浸食されている。この菩薩さまは六観音の一つで、絵画や彫刻では唯一大変おっかない顔をしているが、民間信仰の中の石像は浸食されいてもとてもやさしい表情が残っているのが興味深い。併せてそれらの近くの小さな辻には道案内の石塔があるのを見かける。高根町の古の生活に思いを馳せなかなか趣き深い散歩になる。

ただ、大変残念なことに一方ではあちこちに放置された車を見つけ、趣き不快な散歩になる時がある。公共のスペースに放置されている訳ではないので法律上勝手に処分は出来ないし、とやかく言う筋合いではないかも知れないが、地元の人にとっても別荘族にとってもそこそこ不快なのではないだろうか。この先何年もそのままにして錆びて朽ち果てていくのかと思うと残念でならない。八ヶ岳や南アルプス、富士山を望む南麓の素晴らしい風景の中には決して溶け込むことのない無責任な残滓だ。

<レインボーライン沿いの放置車両>
・モデルから判断して30年は経つだろう

photo by S.Nozaki

都会では流石にそうした放置車は見かけない。そんな家はだらしないと思われるし、近所からクレームが出るだろう。まあ、それでもゴミ屋敷は時折出現するが。高根町ではスペースが十分過ぎるほどあるから自敷地にてそうした残骸処理の仕方もあるのだろうが、刑法・民法上では何とも出来ないので行政で何か指導は出来ないのだろうか。エンジンのオイルが漏れるだろうし、残ガソリンの行方も心配だ。他人様の敷地内だから仕方がないでは済まされない問題だと思う。なにしろ北杜市は上水道の4割近くを湧水や地井戸水に頼っているのだから水質汚染は市民のQOLに直結する。ちなみに、車で田んぼに突っ込む事故を起こし土壌を汚染すると、土の入れ替え等で数百万円の賠償が発生することがあると聞いたことがある。

別荘族や移住者が増えつつも、地元の方の高齢化と人口減が続く中、廃屋や手入れがされなくなった田んぼや畑も目立つ。移住者が増えていることは肌で感じるがそれでも高根町全体の人口は減り続けている。と言うことは、つまり地元民人口がかなりのペースで減っているのである。2025年10月時点の高根町の人口は9,109人、世帯数は4,433世帯。5年前の2021年はそれぞれ9,281人、4,248世帯だった。世帯数が増えているのは別荘族や二拠点居住者が大いに関係している。この人口減の高根町で今まで荒れ地だった場所にモダンな新築の家何件もが建っていくの見かけるのはその証左だろう。また、地元民の子息が敷地内に家を建て独立し世帯が増える、高齢者が施設に入って別居状態になって世帯数が増えるケースもあると聞く。一方では、地元の昔ながらの家が独居化、流出・死亡により空き家化、更に廃墟化していく。そして使い古した車がそのまま残ると言うケースもあるだろう。廃車にかかる費用は数万円、それすらも負担になる人達もいるのか。
なお、既に廃施設となったらしき太陽光パネルも存在する。こんな風景を見ると北杜市の膨大な太陽光パネルが廃棄になる頃はどんな風景が広がるのか、新たな問題が発生するのが空恐ろしい。

<空き家ではない廃墟>
・こうした廃墟があちこちに存在する

photo by S.Nozaki

<既に廃墟化した太陽光パネル>
・この何百倍ものパネルが市内に存在する

photo by S.Nozaki

地元の方の人口減の中、朽ちていく家屋や自然に帰っていく田畑は仕方のないことであり、そうした姿が高根町の歴史跡となっていくと思うが、土に還ることのない放置された車両は50年後どんな思いで見られるのだろうか。市役所に聞いてみても対処は難しい様だ。今後、使わなくなった耕運機・コンバインなども出てくるだろう。実際、放置された耕運機も見かける。別荘族や二拠点居住者は景観や環境を気に入って南麓に居を構えている。地元の人達にはそんなこととは関係ない此処に根を張った生活がある。両社間にはやはりうっすらとした溝があるのだろうな。

<原野に戻りつつある農地>
・まあ自然な流れでしょうね

photo by S.Nozaki

 

だから、せめて此処の自然に癒されている別荘族・二拠点居住者は自分の周りをしっかり整理して高根町の景観を守りたいものだ。ゴミ屋敷・お化け屋敷になっている放置別荘に地元の人は何を思っているだろうか。優しい人達だから何も言わないがいつしかしっぺ返しを受ける日があるだろう。資産価値が下がる・無くなる、売れなくなる、相続が出来ない、固定資産税だけ払い続ける等々。

さあ、明日は近所の市道の草刈りをして資産価値維持に努めるか。周辺の冬支度もしないとね。

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