南麓の恵み トロッとジューシーな洋梨

生活と民俗や風習
<トロットロ、ジューシーな洋梨シルバーベル>

photo by R.Nozaki

和梨のシャキシャキ感と対極の味覚です

 

~収穫を終えて本格販売へ~

私がパートで働く岩原果樹園のメインは、太陽に一番近い土地で栽培しているさくらんぼ。二番手は洋梨だ。丁度、10月頭で収穫を終えた。シルバーベル、カリフォルニア、オーロラ、バラード、様々な種類があるが、ラ・フランスが最も人気が高いだろう。人気があると言っても、やはり日本人の多くは和梨のシャキシャキ、ジューシー感がお好みなのではないだろうか。洋梨はタルトやフルーツポンチの甘ったるいイメージがあるのも、一般的に広まらない理由かも知れない。私もここで働くまでは和梨派だった。

<収穫 真最中>
・実が大きく重く、落とすと傷物になるので気を使います

photo by K.Yasuda

ただ、一度洋梨を食べてみるとイメージは一新した。梨のジューシーさに加えて桃の様なトロトロ感がある。これは、収穫の後、冷蔵庫で一週間から10日程度追熟させて、かつ、その後も品種により更に熟するのを待って「ここぞ!」と言う時に食すると味わえる世界だ。冒頭の写真にあるシルバーベルは、冷蔵庫から取り出して一週間くらい常温で熟させると黄色味がかって来て最適の食べ頃を教えてくれる。品種ごとに微妙なタイミングの差があるので、お客様には最適な時期に適切な食べ方と共に提供することが販売側の面目躍如といったところだ。こうした点は和梨と違い、生産者側も洋梨は扱いが難しいと感じるところだろう。ちなみに、多治見にいる妻にシルバーベルを送ったところ、「めちゃめちゃ美味しい!トロットロ♪」とのLINEが返ってきた。なるほど。

<追熟を終えたラ・フランスが並ぶ店頭>
・お客様には品種毎に最適の召し上がり方をプリントでお渡しする

photo by S.Nozaki

 

この洋梨の販売が佳境を迎えるのと並行して岩原果樹園は冬支度が始まる。洋梨の木々には、堆肥を与え必要な肥料を撒く。次の成長が無秩序にならないように真冬は枝の誘引を行う。これはごく一部の人だけが出来る高度な仕事だ。さくらんぼや葡萄も同様。葡萄などの蔓ものは根元を藁で寒さ対策をしてあげる。来年に向けた地味な養生をしていくわけだ。こうした作業がしっかりなされていくかで、収穫の質が決まっていく。人間も一緒だ。
会社員時代、先輩からは、「厳しく辛い時こそ、寒肥を効かせておけ」と訳の分からないことを言われたのを思い出す。その意味を理解し始めたのは40歳過ぎてからかなぁ~。

<収穫を終え静まりかえった洋梨畑>
・遠く甲斐駒ヶ岳が見守っている

photo by S.Nozaki

果樹園だけでなく、米作農家もこの時期田んぼの掘り起こしを行い来年に備える。肥料が満遍なくいきわたり、微生物の活動も活発になる。そこには虫を求めて鳥も沢山やってくる。害虫を食べてくれる効果もあるのだろうか。農閑期だからこそゆったりと仕事も出来て、南麓の季節を味わうことも出来るだろう。野焼き、薪割り、農業用水の手入れ等、こうした光景が見られる晩秋の南麓は日本の原風景だなとつくづく思う。日本に生まれてよかったなぁ~。

<掘り起こされた田んぼ>
・これから一枚一枚丁寧に作業が進むだろう

photo by S.Nozaki

更に南麓の美しさが増す紅葉のピークまでには時間があるが、既に一部葉の色が変化し落葉もしている。直ぐに薪ストーブを焚く季節がやってくる。67歳になった自分は、この冬、どんな「寒肥」を効かせようか、只今思案中。

<我が家から眺める色づき始めた木々>
・南麓の秋は怖いくらい綺麗だ

photo by S.Nozaki

コメント