photo by S.Nozaki
~自然にしっとり溶け込んだ水田風景~
ゴールデンウィークを過ぎると田んぼに水が張られ始め田植えの準備が始まる。高根町の厳しい冬の寒肥の時期を過ぎ、日差しがやや暖かくなると、各々の農家で田んぼの土の掘り起こし作業に入り周囲がやや賑やかになる。そしてこの時期は貴重な水張りだ。八ヶ岳の豊富な伏流水の恵みがあるとは言え、昔から水の使い方については各村々で厳しい取り決めがあり、それは今でも続いていると聞く。代々、皆が大切に扱ってきた恵みの水がそれぞれの田を満たしていく光景はそれはとても美しい。時には鏡のように周りの山々が映り込み、また時には水田を渡る風が水面に紋様を創り出す。そして、日暮れとなるとカエルの大合唱だ。
<水が張られた田んぼ 1>
張り終えた水が少し緩むと田植えとなる。まさしく一家総出・親戚総出で、苗代で芽を出した苗を植え付ける。今は機械化されているとはいえ大変な作業には変わりない。高齢化も進み後継者も少ないため、村中が助けあう日本の原風景だ。田植えの時期には、こうした自然に溶け込んだ風景が、ここ高根では今も見られる。
<水が張られた田んぼ 2>
稲が育ち始めると、雑草刈りに忙しくなり何かと騒がしい。夏祭りもある。「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の頃になると一帯が黄金の絨毯を敷き詰めたようになり、また格別な美しさを見せてくれる。刈られた稲は野焼きにされ来年に向けた土壌の改良に利される。こうした一連の稲作の流れは人が創り出したものとは言え、自然と融合した美しい日本の原風景であるとつくづく思う。
ここ八ヶ岳南麓は、水が豊富で日当たりもよく、昔から人が住みやすかったためか、縄文時代からの遺跡や遺物が沢山発掘されている。長久の人々の農耕の歴史が自然の中に溶け込んだこうした光景を今も私たちに見せてくれることに感謝したい。
そして自分も「実るほど頭を垂れる稲穂かな」の気持ちを忘れずに丁寧に生活し自然を大切にし、おいしい北杜米の収穫を今年も待つことにしよう。
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