☆サクランボも脳味噌も身体もお手入れが大事!
日々の最低気温が氷点下となり外水道の元栓を閉める頃になると、葉がすっかり落ちたサクランボの木々の剪定作業が始まる。葉が落ちると木々が水を吸い上げなくなるので、枝を切り新芽を間引きするのに最適な時期となるわけだ。新梢が伸び放題になり、新芽も付き放題になっていると春先大変な事になる。先ず葉っぱが野放図に芽吹きだし陽当たりが悪くなる。結果、授粉や摘芯の作業がしにくくなる。栄養が分散し実の付きが悪く色が薄くなる。収穫もしにくくなる。だから、この時期の手入れが大切なのである。これを怠ると実りが薄くなるのはサクランボも、そしておそらく人間も一緒である。
この時期は、①複芽(葉と花の芽の塊)の間引きと②新梢の切り取りの順番で剪定が行われる。間引きはプロの方が一本一本チェックして主枝(幹から出ている長い枝)当たり○○個を上限にと、我々に間引きの指示が出る。陽当たり、側枝(主枝から出ている小枝の塊)のバランス、収穫のし易さを勘案し間引いていく。私の短い経験からではあるが、①実が固まって生る所は陽当たりにむらが出来やすく、色合いもあまり良くないことが多い。②だからバランス良く枝ぶりを作っておくと綺麗で美味しそうな実に繋がる。③葉に覆われて陽当たりの悪いところはジメジメしカビも生える。④枝ぶりが伸び放題になっているととても収穫がしにくく作業が危ない、などが頭にしっかりと刻まれている。
こうした勘所は経験者には蓄積されていくのだろうが、マニュアル化されにくい、またはしないのが、隔靴掻痒な感がある。農業の特質でしょうかね。
<側枝を形作る複芽と単芽の塊>
・これらをバランスよく間引きしていく

photo by S.Nozaki
<現在伸び放題になっている新梢が形作る側枝>
・複芽の間引き後にこれらを落としていく作業が続く

photo by S.Nozaki
話は飛ぶが、子供の頃、家の中が整理整頓され綺麗になっている家は近所での評判が良く品もあり御大臣様であった。会社員時代、机や資料の整理整頓がしっかりしている人は概ね仕事が出来、出世していた。果樹の枝ぶりもしっかり整えられていると実の付きは良く収穫しやすい、はずであると人生の経験値が私に呟くのである。野放図に育って大物になるのはあくまで例外だ。
いろんな事を頭に巡らせながら真冬の作業が二か月ほど続く。その一日は朝5:30起床。先ずは温かいもの(カフェオレが多い)をすすりながら身体を徐々に目覚めさせていく。朝食は抜かずたっぷりと摂る。歳と共に身体が固くなっているので、食後は十分なストレッチと腕立て伏せで更に覚醒させる。これが作業事故を防ぐ第一歩だ。現場までの運転は急がず焦らず。今日は途中雄鹿と遭遇しご挨拶も交わした。そして8:10現場作業開始。翌春の芽吹きの頃を思い描きながらコツコツと進めるが、兎に角寒いのでなかなか辛いものがある。本日は作業場のある清里は氷点下7度まで下がった。キーンと空気が澄み、その分八ヶ岳や南アルプスの山並みは青空にくっきりとラインを描き素晴らしいが、10時くらいまでは手足がビリビリする程冷え込む。八つ下ろしが吹き出すと鼻水が垂れっぱなしになる。
<お目覚めのカフェオレ 至極の時>
・寝起きの糖分は良くないと言われるが・・・

photo by S.Nozaki
<鮮烈なる八ヶ岳ブルーと峰々>
・氷点下の世界にいることを忘れるひと時

photo by S.Nozaki
でも、何処を剪定したら今後の陽当たりや収穫のし易さにつながるか、枝ぶりのバランスが良くなるか、考えながら作業をしていると頭の体操になるし、昇降機から身を乗り出し、時には脚立を上り下りしていると結構筋肉を使うので、老体のお手入れにもなって一石二鳥である。
美味しいサクランボの実を育てるのは冬が隠れた正念場。人間も人生冬の時代に何をしているかでその後の成果が決まる。毎日、春の宵、夏のバカンスみたいな暮らしをしているとそれは自分に跳ね返って来る事になる。冬こそお手入れ、鍛えましょう。
そしてグッドニュースがやって来た。山梨県の最低賃金の改定があり私の時給も12月分より100円上がる事となった。でもアルコールとなって蒸発していきそうではある。


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