photo by S.Nozaki
☆小諸を訪ねて改めて感じる面白さ
4月14日(月)小海線2時間の旅、小諸城址懐古園を訪ねた。今年最後のお花見だ。此処は「男はつらいよ」シリーズの第40話「寅次郎サラダ記念日」の舞台となった詩情あふれる城下町。千曲川旅情のうたが有名だ。自分にとっては、映画の中でポツンポツンと出て来た俵万智さんの「サラダ記念日」の短歌とそれをもじった寅さんのつぶやきが何とも可笑しく、街の風景と共にとても印象に残っており、一度は訪ねたいと思っていた。
<寅さんシリーズ第40話>
・同時期に出版されたサラダ記念日は衝撃だった

from Nozaki`s collection
1987年に発刊されたこの歌集「サラダ記念日」は若い人の間で爆発的に読まれ285万部の大ベストセラーになった。当時の俵万智さんがとても愛くるしかったのも要因かな。もちろん今も可愛い方ですよ。こんな歌がありましたね。
「この味がいいねと君が言ったから7月6日はサラダ記念日」
「嫁さんになれよだなんて缶チューハイ二本で言ってしまっていいの」
五・七・五・七・七のリズムをどうとったら良いのか一瞬悩む不協和音感と、31文字に詰まっている超現実感がとても新鮮だったことを覚えている。
そんな彼女の歌が「寅次郎サラダ記念日」の中にパロディ的にも登場した。映画の中では、
「愛してるなんてカンチューハイ二本で言えるなら こんな苦労はしねってことよ」と寅さんが俵万智流に詠む。一方、寅さんは別のシリーズで甥っ子の満男にこう呟いている。「お前もいずれ、恋をするんだなぁ ああ、可哀そうに」と。短い呟きの中に凡人が持つ真理を押し込めちゃうのも寅流。この万智流と寅流が小諸の街を舞台に融合されてとても面白い映画だった。だから小諸への小さな旅は本当に楽しみにしていた。
日本の桜名所100選の懐古園逍遥の中で見つけたのが島崎藤村記念館。小諸で教師をしていたことを思い出しぶらりと立ち寄ってみた。不勉強で知らなかったが彼は小諸義塾に就任する前、明治女学校で英語の教鞭を執っており、そこで既に許嫁のいる生徒に恋心を抱き悩んでいたとのことだ。結局彼は身を引くことになる。生徒と先生の色恋沙汰はあちこちに落ちているので珍しい事ではないが、あの文豪がと思うと「なかなか人間味あふれるじゃないか」と妙に納得してしまう。ちなみに相手の名は「佐藤輔子」。ネットで調べると出てくる。
<目立たぬ佇まいの藤村記念館>
・馬籠の記念館は47年前に訪れ記憶がない

photo by S.Nozaki
文豪も恋に悩んでいたのか~、とブツブツ言いながら歩いていると寅さんの銅像に遭遇。小諸が映画の舞台になったことを記念して「こもろ寅さん会館」をオープンしその入り口に立てたのがこの銅像だ。文豪は輔子のことがず~っと忘れられなかったそうだが、寅さんはいったい何回恋の悩みを経験したのかな。
「ため息をどうするわけではないけれど わたくし またまた恋したりして」映画ではこんなこと詠っていたな。
小諸と言う街は、旅情だけでなく笑いも誘ってくれる。
<会館前の寅さんの銅像>
・もう閉館されていて寂しい限り

photo by S.Nozaki
お花見後は、寅さんが恋をする三田佳子演じる女医が勤めていた小諸病院(映画でも小諸病院として登場)を探し訪ねた。ありました。外壁は塗りなおしたか張りなおしたか修復が加えられているが当時の面影は色濃く残っていた。映画ではすまけい演じる病院長も女医に恋心を抱いており、毎度のパターンで寅さんは身を引くことになる。文豪との違いは、寅さんは半年後にまた恋をすると言うことかな。
<現存する小諸病院>
・こうした舞台を探すのは私の旅の楽しみ

photo by S.Nozaki
小諸と短歌と寅さん、久しぶりの面白い旅だった。
帰宅し寅さんの名言集を拾い読みしていたらこんなフレーズが。
「今夜はなんだか未来の幸せについてしみじみ考えてみたい気持ちだなぁ」
本当にそんな気持ちになり、晩酌がすすんだ春の宵であった。
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